WATAHIROの映画論的Blog

このブログでは私が鑑賞した映画(時にはそれ以外も)の感想や考察などをなるべくゆる〜く記述していこうと思います。

ゲット・アウト(2017) ジョーダン・ピール監督

 

 見る前はこんな映画だとは思ってもみなかった。

白人のガールフレンドの実家を訪れた黒人青年の身に起こる恐ろしい出来事を描いた今作。

鑑賞前はホラーという触れ込みだったので、黒人の差別主義にホラー的な要素を混ぜ込んだ少し異色の作品かと思っていたが、さすがは数年前の米アカデミー賞を賑わしただけはあるなぁ。蓋を開けてみれば私の考えの遥か先をいく展開だった。

 

黒人差別の問題を描いているのは間違いない。ただ今作はそれだけに収まらないというか、ネタバレになるので詳細は語らないが、こういった展開にすることで差別問題を主題に置いていないというか、別の角度をついた映画に思えてくる。

 

支配層(白人)と被支配層(黒人)という対比。今作では主人公の黒人クリスの恋人である白人のローズの実家に雇われる黒人の使用人という描かれ方から非常に鮮明に浮かび上がってくる。現代のアメリカの白人家庭の実情を詳細に把握しているわけではないが、現代を舞台にした映画でこういうはっきりとした黒人蔑視的な描かれ方は時代錯誤的で違和感のある描かれ方だと最初は思った。だが、ローズの家庭で黒人がどう扱われれて、どういう処理をされているかを知り、最後にこの使用人の黒人の正体を知った時、衝撃に襲われた。

 

催眠術や常軌を逸した脳神経手術など、何だか現実味のない道具立てではあるが、ある意味それが今作を黒人差別問題を超越した異色すぎるエンターテイメント作品に仕立てている。

 

公開から数年経っているので、遅きに逸した感はあったのだが、そんなことは些末なこと。

アメリカの黒人差別を扱っていると難しく感じるかもしれないが、今作は純粋にエンタメ作品として楽しめる作りになっている。見方によってはコメディチックな感もあるかもしれない。

しかし、十分アメリカが現代抱える社会的な問題に目を向けることもできる。

 

映画がだだ撮っているだけじゃないっていうことがわかる。だから深読みするのが面白いのだ。